変形性膝関節症|なぜ膝の内側が痛むの?
変形性膝関節症(膝OA)を発症した場合に、
「膝の内側が痛い」
上記のように、ほとんどの患者さんが膝の内側の痛みを訴えます。
では、なぜ膝の内側が痛むのでしょうか。その痛みの原因を知ることで、的確な治療をすることができます。
今回は「変形性関節症」の中でも
❝膝の内側の痛み❞
に注目し、その原因や実際の症例についてご紹介します。
まずは、変形性膝関節症について知る前提として、膝の関節のしくみについて知っておきましょう。
膝の関節のしくみ
こちらでは、膝の関節の仕組みについて簡単に説明します。
膝の関節は、脛骨(ケイコツ[スネの骨])と大腿骨(ダイタイコツ[太ももの骨])から成りたち、
・脛骨大腿関節と膝蓋骨(シツガイコツ[膝のお皿])
・大腿骨から成る膝蓋大腿関節
の二つで構成されます。
脛骨大腿関節では、膝が伸びていく時に、脛骨が自然と外側に捻じれていきます(脛骨の外旋)。
この動きを「スクリューホーム運動」と呼びます。
スクリューホーム運動によって真っすぐに伸ばされた膝は、逆に脛骨が内側に捻じれる(脛骨の内旋)ことによって曲がり始めます。
そして、脛骨大腿関節と膝蓋大腿関節の連動として、膝関節の内・外旋と膝蓋骨の動きを理解することが重要になります。
具体的には、脛骨外旋時に膝蓋骨が外方移動・内方傾斜し、脛骨内旋時に膝蓋骨は内方移動・外方傾斜が起こります。
この連動する動きが、変形性膝関節症の原因となるのです。
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症の症状
男女比は1:4で女性に多いと言われています。
主な症状の初期は、膝の痛みや水がたまるなどが起こり、「O脚変形」が特徴。末期になると歩行が難しくなります。
変形性膝関節症の診断
・膝の痛みや腫れの程度などの問診や触診
・レントゲンやMRI検査
上記のような診察と検査をします。
変形性膝関節症の治療法
[歩行ができるぐらいの軽症の場合]
・痛み止めの湿布や塗り薬や内服薬
・膝関節内にヒアルロン酸注射
・リハビリテーションとして「膝関節のリアライン・コンセプト」など
・サポーターや器具「リハビー・レッグプレス」の使用
[歩行ができないような重症の場合]
・人工膝関節置換術(軟骨を人工パーツへ変える)
・関節鏡手術(内視鏡で軟骨を除去)
・高位脛骨骨切り術(骨を切り変形を矯正し金属プレートなどで固定)
など上記のような手術が適応となります。
変形性膝関節症|膝の内側が痛くなる原因
膝の関節は、結合組織が重なり合い密集しています。
そのため、互いの組織の滑りが悪くなる「滑走不全」が起こると、組織と組織の間で互いにストレスを与えやすい状態になります。これが痛みの原因となることが多いです。
まずはどの組織が痛みを発しているのか特定し、痛みが生じるメカニズムを推察しなければなりません。
痛みを発している組織を特定するには、何よりも精密な触診が重要になります。
次は、変形性膝関節症で多く見られる“下腿外旋症候群”についてです。
下腿外旋症候群について
脛骨大腿関節の異常な動きとして、以下の状態がしばしば見られます。
・膝を伸ばす時の過度の下腿外旋
・膝を曲げる時の下腿内旋の不足
このような膝の異常な膝の捻じれを「下腿外旋症候群」と呼びます。
下腿外旋症候群に関しては、こちら「”健常”大学生の下腿外旋症候群」の記事で詳しく説明しています。
変形性膝関節症では、下腿外旋症候群が多く認められます。
この場合の治療では、まず下腿外旋を解消させて膝を曲げる時に十分な下腿内旋運動を回復させることが必要となります。
その結果、外側に向いた脛骨を正常な位置に近づけることが可能となります。
変形性膝関節症であっても、このような捻じれが正常化してくると、徐々に関節としての運動機能が改善されてきます。
セラピストの方へ|膝関節での「リアライン・コンセプト」の方針
膝関節における「リアライン・コンセプト」の方針は以下の通りです。
STEP1:リアライン(re-align)
・捻じれ(スクリューホーム運動)の正常化
・脛骨大腿関節の曲げ伸ばしの正常化
・膝蓋大腿関節の膝蓋骨の位置・動きの正常化
STEP2:スタビライズ(stabilize)
・捻じれ(スクリューホーム運動)のコントロールと安定化
・股関節、膝関節、足関節、足部との連動
STEP3:コーディネート(coordinate)
・問題となりやすい動作の再学習
変形性膝関節症の症例紹介
変形性膝関節症と診断された患者さんの治療を2例紹介します。
【症例1】
・60代女性
・変形性膝関節症(罹患期間5年)
治療プログラム
・下腿外旋の原因となる膝周囲の軟部組織に対する組織間リリース
・下腿内旋位での膝の曲げ伸ばし運動
経過
1回の治療によって、膝内反(O脚)の改善、可動域の改善が得られました。その後、3回に渡る治療により歩行時の痛みが消失しました。
【症例2】
・40代女性
・バレーボール
現病歴:特に膝を怪我したことはありませんでしたが、仕事や日常生活で左膝に痛みが出現する。医療機関受診後に落ち着いたが、約1ヶ月半後に再び疼痛が悪化した。
評価
・膝蓋骨の内側、外側、下側に腫れや熱感あり。
・膝の曲げ伸ばしの最後に膝蓋骨の内側と外側に痛みの出現。
・歩行ではわずか痛み、階段下りで特に強い痛みあり。
・可動域は曲げ伸ばしと共に痛みによる多少の制限あり。
・大腿四頭筋やハムストリングスなどの太ももの筋力の低下あり。
・大腿四頭筋に力を入れた際に膝蓋骨周囲に痛みあり。
・大腿四頭筋に力を入れた際に、著明な下腿外旋が認められ、膝蓋骨の外方傾斜が見られた。
・MRIでは内側・外側半月板に病変が認められた。
治療プログラム
太もも外側のリリースにより、下腿外旋のアライメントを修正しつつ、膝が最後まで伸びるようにしました。
脛骨の後方への可動性が不十分であったため、内側のハムストリングス~腓腹筋間のリリースを丁寧に行い、下腿内旋エクササイズにて、内旋可動域の向上に努めました。
経過
1回目の治療後には、膝の可動域が改善し、体重をかけない運動では痛みが消失しました。
2週間後には、スクワット時の痛みが消え、1ヶ月後には、バレーボールの練習に部分的に参加することができました。
2ヶ月後には、下腿外旋が改善され、膝の曲げ伸ばしの動きも問題なく行えるようになりました。
階段下りでは、痛みはなく違和感程度となりました。
最後に、膝の捻れに効果のあるおすすめの商品をご紹介します!
膝関節の“捻れ”に効果的なおすすめ商品
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「膝の曲げ伸ばしや回旋運動を行うこと」
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まとめ
膝関節の捻じれ、特に外側への捻じれによって、膝の痛みや機能低下を引き起こしている症例は数多く見受けられます。
変形性膝関節症であっても、問題となる組織を特定し、適切に治療することで、症状の改善は可能となります。
この記事がお悩みの方のお役に立つことを願っております。
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