肩関節の可動域はどのように改善させる?パートⅡ 肩の周りが原因で動きにくくなった肩の治療

ジョイントヘルス

今回は「肩関節の可動域はどのように改善させる?パートⅡ」として

肩甲上腕関節そのものに焦点を当てて、

組織間リリースを用いて行う治療のお話をします。

パートⅠはこちらからご覧いただけます。

後方部の治療

後方タイトネスや後方関節包タイトネスとも呼ばれます。

主な構成要素としては、三角筋後部線維、棘下筋、小円筋、上腕三頭筋、肩甲上神経、

腋窩神経、関節包、そして棘下筋・三角筋間の脂肪体が含まれます。

 

腹臥位で、上肢をベッドから下垂させた状態とします。

三角筋後部線維を肩甲上神経と腋窩神経をこするようにしてリリースします。

その上で、棘下筋、小円筋、上腕三頭筋から三角筋後部線維をリリースして、外転位で肩甲棘のレベルにまで上方に移動させます。

 

次に上腕三頭筋から腋窩神経を内側に向けてリリースし、

その上で上腕三頭筋から小円筋を内側に向けてリリースします。

これにより、上腕三頭筋を伸張できる状態が得られます。

 

その後、関節包から小円筋と棘下筋を内側に向けてリリースします。

これらを最大限リリースするには、背臥位・肩屈曲位で全く緊張しない状態にまで近位に滑らせるようにします。

 

以上を行った上で、四つ這い位での肩後方関節包ストレッチ(All-fours posterior capsular stretch: APS)にて関節包を最大限拡張させます。

 

腋窩部の治療

腋窩部では、関節包に癒着する小円筋、上腕三頭筋長頭、肩甲下筋を

関節包から完全にリリースします。

これにより、inferior pouchの容積が拡大し、挙上に伴う上腕骨頭の下方への滑り込みを再獲得させます。

結果として、上腕三頭筋に上腕骨が密着した状態を取り戻し、「ふりそで」状態を解消させます。

 

前方部の治療

肩関節前部には、三角筋前部繊維、大胸筋、上腕二頭筋長頭、短頭、広背筋、大円筋、肩甲下筋、

さらには烏口上腕靭帯、結節間靱帯、腕神経叢およびその遠位の末梢神経などがすべて拘縮状態に陥ります。

 

手順はかなり複雑ですが、概ね以下のような順序でリリースを行います。

・三角筋前部線維の大胸筋に対する外側へのリリース

・大胸筋遠位部の上腕二頭筋長頭、短頭、広背筋から上方へのリリース

・大胸筋の小胸筋・烏口突起上での内側へのリリース

・上腕二頭筋長頭と結節間靱帯のリリース

・烏口腕筋と広背筋のリリース

・広背筋と大円筋、肩甲下筋のリリース

・尺骨神経と烏口腕筋のリリース

・腕神経叢と広背筋、小円筋、第2・3肋骨、鎖骨下筋などのリリース

・肩甲下筋と関節包のリリース

 

以上のリリースを順次進めていくことで前方の組織の滑走性が改善するとともに弛みが顕在化する場合もあるため、

事前に後方拘縮を十分に解消させておくことが必要です。

 

上方部の治療

上方では肩峰下スペースでの癒着のリリースが必要となります。

まずは肩峰下滑液包と肩峰、肩鎖靭帯からのリリース、肩峰下滑液包と棘上筋のリリース、

棘上筋と関節包のリリース、三角筋と三角筋下滑液包のリリースなどが含まれます。

 

肩峰下滑液包と肩峰とのリリースは、背臥位、肩伸展位で行うリリースすることにより

、屈曲位における肩峰後部リリースと同じ意味を持つようになります。

すなわち、狭い肩峰下スペースに指を滑り込ませるのではなく、肩峰下から滑液包が出てきたところでリリースを行う方が容易です。

 

可動性の高い肩関節は、非常に多くの組織の影響を受けています。

それ故、可動域制限が生じた際は、面倒ではありますが一つ一つその滑走性を確認していく必要がありそうですね。

 

 

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