痛いところに手が届く 痛みを発している原因を見極めることが、治療するうえで重要。評価と治療は表裏一体。

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「痛いところに手が届いた」治療をするために

みなさんは日々の治療を始める前に、患者さんの痛みの原因箇所を特定できていますか?
「鼠径部が痛い」という主訴に対して、何が痛いのかを確かめずに鼠径部に物理療法やストレッチを使っていませんか?

何が痛みを発しているのかを精密に見極めることができれば、

治療のターゲットが精密になり、治療効果も計算できるようになってきます。
私は精密触診と組織間リリースという手技を用いることにより、痛みの中心を探り当て治療をしています。

まず精密触診で発痛源をしっかりと見極めます。「・・・神経」というだけでなく、「・・・神経の深層で・・・・筋との癒着」というように、神経のどちら側に癒着があるのかまで突き止めます。

このようにターゲットを見極めたうえで、組織間リリースでその治療を進めます。精密触診の詳細は別稿に譲り、今回は組織間リリースという技術について紹介します。

◆ 組織間リリース(ISR)とは

組織間リリース(Inter-Structural Release:ISR)とは、指先を組織の間に滑り込ませて、末節骨遠位端を使って1mmの精度で疎性結合組織をリリースする技術のことをよんでいます。ISRは、あらゆる軟部組織(=皮下組織、筋、腱、神経、骨膜など)の間に存在する疎性結合組織をリリースすることを意図したものです。神経や筋などの大切な器官や組織をつぶすことはありません。

具体的な技術としては、指先の末節骨の一角を用いて、組織の表面をこするようにして組織間の結合組織に力を加え、1㎜ずつ滑走性を改善します。幼少期のときのように、すべての組織間がスムーズに滑るようになることで、組織の緊張が軽減されます。また、癒着で起こっている神経や血管の痛みを劇的に軽減させることができます。

◆ ISRの効果

① 慢性痛への効果

Fascia(線維性結合組織)の重責をエコーでの生理食塩水でリリースすることにより、頑固な慢性痛が改善されることが近年わかってきました。また、股関節鏡手術において、関節包に癒着する瘢痕組織をレーザーやシェーバーでリリースすることで、術後の可動域と痛みの大きな改善が得られることが分かってきました。さらに、慢性炎症により形成された異常血管と疼痛との関連性、fascia内の水分の可動性と発痛物質との関係なども解明されつつあります。これらは医師による治療技術として近年発展しているものですが、ISRを習得することにより、セラピストもこれらと同様のことを実施できるようになります。

② マルアライメントの修正

ヒトが正常に身体運動を行うためには、皮膚、皮下脂肪、筋、腱、靱帯、関節包、骨膜などすべての組織において、隣接する組織との間で可動性を保つ必要があります。ISRを用いることで、組織間の癒着に基づく慢性痛を取り除くだけでなく、マルアライメントの修正を進めることが出来ます。

③ 正常な筋機能の獲得

ISRの技術によって、炎症や組織損傷の結果として癒着している組織をリリースすることができるようになります。例えば、ハムストリングスの肉ばなれのあと、半膜様筋と大内転筋、大腿二頭筋長頭と半腱様筋などが癒着を起こすと、それがしこり・違和感として感じられ、筋が痙攣したり、再び肉ばなれしそうな不安感をもたらしたりします。深い屈曲位でのハムストリングスの最大収縮で、筋がつりそうになることはよく経験されることです。ISRを習得すると、これらを確実に、しかも症状や機能の変化を検証しながら治療を進めることができます。

◆ まとめ

組織間リリース自体はとても有用な治療法ですが、その技術を正確に習得するにはそれなりに時間がかかります。正確な技術を習得せずに真似事だけではうまくいきません。専門的トレーニングを積んでいく必要があります。患者さんからは、この技術を使えるセラピストを全国に増やしてほしい、という要望を頻繁に聞きます。多くのセラピストに広まるよう、技術を広めていきたいと考えています。

◆ 医療従事者の方へ

ISRの実技を学びたいという方は、こちらからセミナーのページをご覧いただけます。

是非一度ご覧ください。

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