足首の捻挫の後遺症、
なかなか改善しない痛みを探索する!
1. 背景 中学生サッカー選手のアスリートケアを行う機会がありました。公園でサッカーをしているとくに凹みに足を取られて足首をひねったそうです。つま先が内に向く捻挫(内反捻挫)でしたが、外くるぶし周辺の外側靭帯の損傷は軽度で、内側部の痛みが強かったのでMRI検査を行なったそうです。
MRIでは、距骨の前部の下側(距骨脛底側)に骨の打撲が認められ、不全骨折と診断されて松葉杖を使って体重をかけないように指導されたそうです。その後、数週間して骨が治っていたので、荷重の許可、さらにはランニングの許可が出て、少しずつ練習を再開しようとしたようです。 しかし、受傷から2.5ヶ月たっても足関節内側・後部の痛みが残って復帰できずに困っていたそうです。しかし、曲線走などでの痛みが軽減しないため競技復帰の目処が立たず、心配されていまた。
2. 症状 当日の症状・状態は以下の通りでした。 ● 超音波ドップラーで確認したところ、炎症らしい所見は認められませんでした。● 内くるぶしの後下方(踵より)に痛むということで、その部分を指で押したり、体重をかけたりすると痛みが認められました。● 足首を伸ばし(底屈胃)にて指を曲げ伸ばしすると、同じ部位に痛みがありました。 以上から、長母趾屈筋、長趾屈筋が痛みの原因であると推測されました。また、他院からではあるにせよ競技復帰許可が出ているので、基本的な治癒は得られていると想定しました。またドップラーで炎症反応もないので、癒着による痛みである可能性が高いと考えました。このため2つの腱の癒着のリリースを行い、滑走性を改善して痛みが変化するかどうかを確認することにしました。
3. 治療 組織間リリースを用いて、長趾屈筋と長母趾屈筋の癒着を探索しつつ、順次リリースしていきました。リリースしようとしたときの痛みをリリース時痛と呼びます。例えば、長母趾屈筋とその深部の関節包との癒着をリリースしようとした際にリリース時痛が起こることを確認し、リリース後に痛みが軽減・消失することを確認しながら治療を進めます。
今回は、内くるぶしの後下方で、屈筋支帯から上に1.5cm程度の範囲でリリース時痛が生じたので、これらを順次リリースしていきました。この治療の結果、押したときの痛み、体重をかけたときの痛み、ランニングの痛みが消失しました。
なお、痛みに対する治療以外に、足首の可動域を広げ、また筋力の発揮を妨げる可能性のある筋肉や腱の癒着を順次リリースして、「正常」な足関節を取り戻すようにします。痛みなくトレーニングできるようになったので、2-3週間かけてじっくりと体力を回復させてから練習に復帰するようにとアドバイスしました。
4. まとめ 捻挫や骨折のあとに、復帰の許可がでても痛みがなかなか軽減しない場合は珍しくありません。受傷した患部が治っていないわけではなく、また炎症もありません。しかし実際に復帰できないような痛みがあるという事実があるので、これをなんとしても解決するのが我々の役割だと考えています。 このような時、私は精密触診を用いて腱や神経を探索します。本人が普段感じているのと同じ痛みを探索したところ、上に書いた2つの腱の深部(関節包側)に痛みと癒着があることを突き止めました。 私のライフワークとして、このように困っている症状を解決できるようなセラピストを増やすことを目指しています。エコー技術、精密触診、そして組織間リリースの技術を習得してもらうため、セミナーなどの勉強の機会を作っていきたいと考えています。
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