腰の痛み・お尻の痛み:仙腸関節痛になりやすいアライメント

ジョイントヘルス

腰の痛み・お尻の痛み:仙腸関節痛になりやすいアライメント

「仙腸関節」

最近では、この関節の名前を知っておる方も多くおられるかと思います。

TVなどのメディアでも良く耳にしますよね。

仙腸関節の治療を専門としている、医師も全国にはまだ少ないですが存在しています。

今回は、その仙腸関節の痛みを生じやすい方の特徴(アライメント)に関しての記事を書きます。

逆に言えば、既に痛みがある方は、このような特徴があるので、修正すれば改善するよ

という観点でみて頂ければと思います。

 

骨盤の仕組みと役割

骨盤の仕組み・役割

骨盤は、

・寛骨(腸骨+恥骨+坐骨)

・仙骨

・尾骨

という骨で構成されています。

寛骨と仙骨が接する部分は仙腸関節(左右両側に一つずつ)、左右の恥骨が接する部分は恥骨結合と呼ばれています。この仙腸関節と恥骨結合により骨盤輪と言われる輪が作られます。また、骨だけではなく、骨盤の周りには強力な靭帯が張りめぐらされていて、これにより安定性を生み出し、体幹の荷重を下肢に伝えています。

骨、靭帯、関節包といった関節の構造による安定化をForm closureと言います。

一方、筋や筋膜による安定化をForce closureと呼びます。

 

骨盤アライメントと仙腸関節の関係性

このように強力に連結されている骨盤ですが、実際は前後傾、内外旋、上下方回旋、また3方向の偏位を含めて、

12方向に動きます。仙腸関節の可動性は前屈、後屈、片脚立位で1.7-2.2°、0.5-1.3㎜と報告されていますが、

屍体解剖では、仙腸関節の移動量が2㎜であったとする研究も存在します。

骨盤は、周囲の筋の緊張によって左右非対称となることが多く、仙骨も左右の仙腸関節の可動性に応じた位置関係をとります。骨盤・仙骨の非対称性が仙腸関節痛に影響すると考えられていますが、

仙腸関節痛が腰痛と鑑別されず、見落とされる例も多い 

と推測されます。

見落とされる原因のひとつに、仙腸関節機能に対する客観的な評価方法が確立していないことが挙げられます。

そのため、仙腸関節痛に対する治療のゴールドスタンダードが確立されていないのが現状です。

骨盤が多方向に動くこと踏まえても、その治療方法は1つではなく、

共通の評価に基づくパターン化による、治療への道筋作りが必要 

だと考えられます。

 

仙腸関節痛を引き起こす上後腸骨棘(PSIS)の開大

仙腸関節痛を引き起こす要因の1つに、骨盤の後方にある上後腸骨棘(PSIS)の開大によるストレスがあります。

上後腸骨棘間が開大する原因として、下記の3つが挙げられます。

  • 寛骨内旋 ※上前腸骨棘(ASIS)間の接近
  • 寛骨下方回旋 ※腸骨稜の開大
  • 寛骨前・後傾

これら3つは、複数同時に見られることもあり、それぞれを引き起こす軟部組織の滑走不全は触診によって特定できます。

その滑走性の改善によって上後腸骨棘間を接近させ、仙腸関節の安定性を向上させることができます。

治療例

症例紹介

40代男性

診断名:腰椎椎間板症

職業:トラック運転手

現病歴

もともと腰痛持ちでしたが、治療の一週間前にぎっくり腰のようになり、しばらく置き上がることも困難になりました。

その後、少し痛みは落ち着きましたが、立ち上がる際に痛みを感じ、立っている時には腰を伸ばせない状態でした。

評価

  • 疼痛動作:立ち上がり、立っている時、後屈時に痛みあり
  • 疼痛部位:右腰部、右PSIS
  • 一般的な評価:Straight Leg Raise(SLR)問題なし(右でわずかに挙上困難)、右骨盤挙上位、右股関節の伸展制限、大腿外側・鼠径部の滑走不全、右殿筋の出力低下、腹部低緊張
  • 静的アライメント評価:右寛骨前傾・内旋・下方回旋、尾骨左偏位
  • 動的アライメント評価:後屈時に右上前腸骨棘(ASIS)内側・下方偏位⇒右ASISの後傾誘導で疼痛減弱

問題点

右寛骨の前傾・内旋・下方回旋による右PSIS間の開大ストレスと、それに伴う脊柱起立筋群の筋スパズム

目標

1)右PSIS間の接近、尾骨アライメントの修正

2)大殿筋、腹横筋下部の筋出力向上による骨盤輪安定化

治療プログラム

  • 右大腿筋膜張筋、中殿筋前縁リリース
  • 右縫工筋、鼠径部リリース
  • 左大殿筋リリース

経過

治療後、立位時・後屈時の痛みと、立ち上がった際の痛みは消失しました。重量物を持ち上げる際の痛みは残存しています。

今回の症例は、ぎっくり腰になったと言って来院されましたが、骨盤アライメントの修正により日常生活での痛みの消失が見られました。重量物の持ち上げでの痛みが残存しているので、仙腸関節を支える大殿筋や腹横筋下部の筋出力の向上が今後必要と考えられます。

 

 

今回は1例を挙げて説明をしました。

仙腸関節痛は、骨盤・仙骨アライメントの非対称性により起こることが多いとされていますが、単なる腰痛として見過ごされるケースも少なくありません。

そのため、正確な鑑別には骨盤アライメントの正しい評価が重要になります。

この記事が痛みに悩む方や、セラピストのお役に立てることを願っています。

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