産後の「骨盤矯正」は不要! 不調解決のために 医療資格を持つ「産後ケアセラピスト」を養成しています

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産後の「骨盤矯正」は不要!
不調解決のために 医療資格を持つ「産後ケアセラピスト」を養成しています

産後に骨盤矯正は必要?

骨盤矯正という言葉にどのような印象を持ちますか?

  • 歪んだ骨盤に力を加えて歪みを整える?
  • 左右対称にする?
  • 妊娠中から出産にかけて広がった骨盤を細くする?

そもそも大前提として、骨盤はどの程度歪むのでしょうか? 正常な骨盤では、骨盤の後ろにある仙腸関節において1-1.5度程度動きます。出産直後は多少の弛みが生じるので、可動性は多少大きくなっている可能性がありますが、それを証明した研究は一つもありません。つまり、科学的には、「産後に骨盤が弛むもしくは歪むということについての根拠はない」ということになります。ただし、だからといって歪みや弛みが存在しないということでもありません。単に、歪んでいることは過去に適切な方法で測定されていなかった、と解釈すべきです。

それでは、なぜ骨盤矯正が必要だと思うのでしょうか? 殆どの方は、①痛みがあるから、②骨盤周囲に脂肪が増えたから、③その他の不調、④何となく、というくらいの理由で骨盤矯正が必要と考えているのです。そもそも、矯正しなければならない歪みなどが存在しない場合でも。

 

「骨盤矯正」という言葉を安易に使う人を信じてはいけない

巷には骨盤矯正という言葉が氾濫しています。特に、「産後半年以内に骨盤矯正しないと、取り返しがつかなくなる」といった脅迫めいた宣伝文句がよく聞かれます。特に妊娠中の女性には様々な不調を経験するので、産後の骨盤矯正は不可欠と思っている場合が多く、それに漬け込む形で「時限付き骨盤矯正サービス」を売り込もうとしているニセ専門家が多いのです。

骨盤矯正、看板、産後

私は、骨盤の歪みを3次元的に精密に測定する研究に取り組んで来ました。骨盤の後ろにある仙腸関節は1-2mm開く場合がありますが、それが産後だけに起こるのかというと、出産とは無関係に骨盤に不調をきたす人に見られます。出産経験のあるひととない人の骨盤を比べてみても、産後の骨盤が明らかに弛い、もしくは歪んでいるという根拠はまったく見つけることが出来ません。

つまり、精密な研究に基づけば、産後の骨盤矯正は必要ないということになります。そして、「骨盤矯正」をしないと取り返しがつかなくなる、というような宣伝文句はあっさりとスルー(無視)すべきです。

「骨盤矯正」が必要だと思ってしまう理由

それではなぜ多くの産後女性が無意味な骨盤矯正に大切なお金をつぎ込むのでしょうか? 殆どの方は、①痛みがあるから、②骨盤周囲に脂肪が増えたから、③その他の不調、④何となく、というくらいの理由で骨盤矯正が必要と考えているのです。よく考えてみてください

①痛みがあるから  ⇨  痛みに対しては、痛みの治療が必要です。
②骨盤周囲に脂肪が増えたから ⇨ 脂肪が増えたことに対しては、適切な栄養管理と運動による脂肪量減少が必要です。
③その他の不調  ⇨ 尿もれ、骨盤底筋の弛み、会陰部痛などには、それぞれの原因を解明して、その状態に最適な治療を選択すべきです。骨盤底筋が弱くなっていれば、骨盤底筋を適切に鍛える必要があります。
④何となく ⇨  骨盤矯正が必要という宣伝が刷り込まれた結果でしょう。

つまり、「骨盤矯正」ではなく、あなた自身の「症状」に対して最適な治療法を選択するための専門家を見つけることが必要なのです。信頼できる専門家は安易に「骨盤矯正」などという言葉を使いません。また時限付きで「取り返しがつかなくなる」といったような脅し文句を言うこともありません。ましてや、半年間の時限付き回数券を高額で売りつけることもありません。

 

「骨盤矯正」は不要でも、「適切な骨盤のケア」は必要では?

産後の骨盤のケアは必要です。

具体的には、
・妊娠中の姿勢が産後も残りやすく、腰や肩、首などの不調を来す可能性が高い
・妊娠中には横向きに寝ることが多く、体の側面の筋肉や腱、神経が固くなりやすい

・産後の抱っこや授乳の姿勢は骨盤に負担をかける
・産後には腹筋や背筋など体幹の筋力が弱くなっており、家事や育児の負担によって腰痛をきたしやすい
・骨盤ベルトや抱っこひもによる身体の圧迫は神経や筋肉の癒着を作り、様々な不調を引き起こす

などの理由により、骨盤ケアは必要です。

「骨盤ケア」と言っても骨盤の歪みをグイッと直すのではありません。硬くなった筋肉や神経を滑らせるような治療、伸び切った腹筋が再び縮むことができるように腹筋を滑らせる治療、硬くなった股関節や肋骨を柔らかくする治療、出産で傷ついた骨盤底筋をしなやかにする治療、などが必要です。そして、何か手に負えない問題や、適切な検査を受けなければならないような問題があれば、医師の診察を受けるように勧めることは何よりも重要なことです。

骨盤の周りには多数の神経や血管があります。肘や手で強いマッサージを受けたり、ボールやローラーで強い力でゴロゴロすると確実に何かがダメージを受けます。それが神経だとすると、様々な神経痛やしびれが引き起こされます。

骨盤ケアを行うことのできる「専門家」には、
①神経や血管がどこにあるのかがわかる
②筋肉の間にあるしこりが神経の癒着によって起こっていることがわかる
③筋肉、神経、血管などを確実に触り分けることができる
④神経を潰すような治療は有害以外の何物でもない、ことがわかる
といった基本的な知識と技術が求められます。あなたが受けた「骨盤矯正」で、神経を潰さないようにといった配慮はあったでしょうか?

 

「産後骨盤ケアセラピスト」に必要な知識と技術

リアラインとは【歪みを治す」を意味します。産後の骨盤を治療するにあたって、上記のような国際論文の情報を含めて骨盤の歪み(マルアライメント)についての正確な知識を持つこと、そしてそれを目の前の患者さんに適用して正確に症状の成り立ち・メカニズムを理解すること、そしてそれを確実に治すことが求められます。

具体的に身に着けなければならないこととしては、
1. 医学的知識
2. 治療の設計図(方針決定)
3. 評価技術
4. 治療技術
が求められます。産後の骨盤痛の治療に対して強い情熱を持ち、上記の4要素を備えたセラピストの養成が不可欠だと考えています。

産後の骨盤痛の治療を担うことができるのは、医師と医療資格を持つセラピストに限定されます。適切な治療方針を作るには、個々の患者さんの状態を正確に理解し、有効な治療法を選択するとともに、症状を悪化させるような治療を予め回避しなければなりません。「・・・法を行なってみたら悪化した。」というようなことがないように、予め予見できなければなりません。リスクを予見するためには骨盤の状態を先入観なしに正確に評価しなければならないのです。

1. 医学的知識と医療資格
言うまでもなく身体の構造がよくわかっていること、神経や血管の位置関係や、様々な病気や症状との関係がわかることなどが重要です。つまり、医学教育を受けた証(すなわち医療資格)を持っていることは人の体を知っているという意味でとても重要です。
・看護師、助産師、理学療法士、作業療法士などはコメディカルとして医学教育を受けています。
・鍼灸師やマッサージ師(鍼灸治療院)、柔道整復師(整骨院)の資格は、法律が認める範囲で人の体に触れることがみとめられています。
・整体やカイロプラクティックは医療資格ではなく、医学教育を受けていないと考えるべきです。(ごく一部の方は海外で医学教育を受けた場合があります。)

2. 治療の設計図(方針決定)
治療をすすめるにあたり治療の進め方の基本を理解している必要があります。私は、リアライン・コンセプトという治療の設計図を提唱しており、確実に関節の痛みを治す手順をセミナーなどで医療資格者に教えています。リアライン・コンセプトでは、①関節のスムーズな動きを取り戻すこと、②痛みを消した上で関節が理想的な運動を行い続けられるように筋肉を鍛えること、③再び関節のスムーズな動きを失うことがないように動作を修正すること、という順番に治療を進めます。①をリアライン、②をスタビライズ、③をコーディネイトと呼びます。

3. 評価技術

評価とは、身体に起こっている問題を把握する技術です。例えば痛みが何神経から発せられているか? 関節の動きを制限している筋肉はどれか? 皮膚の感覚に異常をきたす原因は何か? 関節の弛みの原因は何か?といったことが、的確な検査によって把握できます。評価ができない人は、「直感」だけであなたの状態を想像しているだけと癒えます。

4. 治療技術

治療技術で重要なのは、痛みの原因を取り除くための治療技術、関節の動きを制限する筋肉などの動きをなめらかにする技術、的確に筋肉やファシアをストレッチする技術、そして弱くなった筋肉を的確に鍛える技術などが含まれます。必要最小限かつ最適な方法で、体の外からサポートする方法を提案できる。ただ、グイッと骨盤を動かすようなものではありません。

周産期ケア勉強会とリアライン産後ケア

私達は、全国の産後ケアセラピストとともに、産後ケアを行なっています。産後ケアに興味のある女性セラピスト(医療資格者)を集めた「周産期ケア勉強会」を2018年から開始し、2019年は月に3回以上のペースで全国各地で行なってきました。2020年に入ってからはコロナの影響で、オンラインで月1回程度の開催にとどめていますが、多くのセラピストと一緒に意見交換をしたり技術を伝えたりしています。

このような勉強会からえた知見をまとめて、「リアライン産後ケア」という治療法をとりまとめ、セラピストの養成にも取り組んでいます。「リアライン産後ケア」でGoogleで検索すると、170万件以上ヒットします。リアラインとは歪みの改善を意味する言葉でrealignという英語に由来します。

今後、全国の産後ママに気軽に産後骨盤ケアを受けていただくため、「リアライン産後ケアセラピスト」を養成しつつ、その施設を産後ママに向けて紹介して行きたいと思っています。産後ケアを受けたい方は、こちらのページもご覧ください。

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