今回は、膝蓋下脂肪体に関しての記事を書きました。
膝蓋下脂肪体の基本的な知識と、拘縮を起こした一症例をご紹介します。
膝蓋下脂肪体とは
膝蓋下脂肪体は、膝関節の関節内、滑膜外に存在する脂肪組織です。
前方では膝蓋腱、後方では大腿骨顆間窩、横靭帯、半月板前角、膝蓋下滑膜ヒダを介して前十字靭帯、
脛骨、上方では膝蓋骨(膝蓋骨内側縁,外側縁,膝蓋上嚢まで達する場合も)、下方では深膝蓋下滑液包に接しています。
つまり、たくさんの組織と接しています。
膝蓋下脂肪体の役割
膝蓋下脂肪体の役割は、
・関節内の潤滑作用を向上
・膝関節の衝撃緩衝作用を向上
といった役割を担っています。
また、膝蓋下脂肪体には神経終末が豊富に存在するため、鋭敏に痛みが感じられ、
膝前面痛の疼痛源の一つとして認識されています。
さらに、疼痛を引き起こす神経伝達物質が膝蓋下脂肪体内には多く認められているので、
その血管拡張作用により炎症や浮腫を引き起こすとされています。
膝蓋下脂肪体は皮下脂肪と比べて多くの炎症性のサイトカインを産出することもわかっており、
膝関節の炎症反応を調整する働きがあると報告されています。
このことから、膝蓋下脂肪体は膝関節の軟骨変性に関与し、変形性関節症の進行にも影響を与える可能性が考えられています。
膝蓋下脂肪体は単なるスペースを埋める補助的な組織ではなく、
実は膝関節内の恒常性を維持する重要な役割を担っているのかもしれません。
膝蓋下脂肪体の動態
膝蓋下脂肪体は、膝屈曲時には膝蓋腱と脛骨との間隙が小さくなるため、大腿骨顆間窩に押し込まれます。
一方、膝伸展時には膝蓋下滑膜ヒダに押し出されるように膝蓋腱下に移動します。
通常、脂肪体の形状は膝の屈曲伸展に対してある程度の自由度を持って変化します。
しかし、炎症などにより脂肪体自体の可動性が失われたり、
膝蓋大腿関節のマルアライメント(低位,高位,外側偏位など)や脛骨大腿関節のマルアライメントがあったりすると、
脂肪体圧の上昇や膝蓋大腿関節に挟み込まれるインピンジメントが生じることが容易に想像できます。
膝蓋下脂肪体炎・拘縮とは?
膝蓋下脂肪体は、直接的な外傷、繰り返しの機械的刺激、膝関節の手術などにより炎症が生じ、浮腫や線維化を引き起こします。
その結果、脂肪体の柔軟性が失われ、膝関節可動域制限、疼痛、大腿四頭筋筋力低下などが生じてしまいます。
症例:半月板切除術後だけれど…問題はこれ!
外側円板状半月の部分切除術後の5年を経過した症例で、長時間立位などで膝前面痛とこわばりを主訴としました。
触診にて、膝横靭帯と膝蓋下脂肪体の癒着を確認しました。
エコーで見ると、膝伸展時に脂肪体深部が膝深部に引き込まれているような状態でした。
膝横靭帯から脂肪体をリリースした後にエコーで見ると、脂肪体深層が脛骨から離れ、近位に移動する様子が読み取れます。
これにより症状は消失し、快適にフルスクワット、筋力発揮、ジャンプなどを繰り返すことができるようになりました。
膝蓋下脂肪体拘縮に対する膝横靭帯・膝蓋下脂肪体間のリリース前後の様子はこちらからご覧いただけます。
https://www.facebook.com/kazgamadaofficial/videos/741320642913304/
この症例は、半月板の鏡視下術後に膝蓋下脂肪体の拘縮が発生しましたが、
これを防ぐか治療するかのいずれかをしない限り、いくら半月板がきれいになっても症状が残ってしまい、完全復帰できません。
膝蓋下脂肪体は、半月板や前十字靭帯と接しており、さらに関節鏡手術により脂肪体自体にも侵襲を受けている可能性があります。
したがって、半月板や前十字靭帯の鏡視下手術後の膝蓋下脂肪体のマネージメントは重要になってくると言えます。
膝の前の痛み:膝蓋下脂肪体について
手術後の膝の痛みに悩んでおり、この記事にたどり着きました。記事の内容と私の症状がよく似ており、この治療方法を試してみたいと思いコメントしました。
よろしければ、教えていただけないでしょうか?
リアライン・スペシャリストのうち、ジョイントヘルスセラピストの治療を受けられることをお勧めします。以下のページのリストにてお探しください。
https://myspecialist.info/specialist/
またこのページの右上からの無料相談も承っていますので、ごりようください。