股関節が詰まる、うまく曲がらない
坐骨部拘縮 /小殿筋・大腿方形筋が作る頑固な股関節屈曲制限
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■股関節の可動域制限の影響
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変形性股関節症ではない若年者の股関節において、膝を胸に近づける事ができない状態になっていることがあります。膝を胸に近づけるとき、股関節は「屈曲」します。屈曲が制限されると、
・足の爪を切れなくなる
・靴下を履くことができなくなる
・椅子から立ち上がるときに重心が後ろにいってしまう
など、生活にいろいろな不都合が起こります。
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そして、将来的に変形性股関節症になる可能性もあります。軟骨が削れ、骨の変形が進むとさらに可動域が制限され、生活の様々な場面で不都合が生じるようになります。このため、是非とも変形が進む前に解決しておきたいものです。
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■可動域制限の原因(制限因子)
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股関節が硬くなる原因はいくつもありますが、大きく分けて
1)股関節前面の詰まり
2)側面(外側)
3)後面(殿部、ハムストリングス)
などの柔軟性低下があります。組織間リリースを使えば、これらを解決することはできますが、それでも可動域を改善できない場合には上記以外の要因を探し当てる必要があります。
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背臥位で股関節を屈曲した際に、坐骨付近が突っ張るような感覚があり、痛みはなく、しかしストレッチもできないような状況があります。このような症例は多いので、これまで隠れている制限因子をいろいろと探索してきました。その解決策のヒントが見つかったので、詳しく書くことにしました。
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■坐骨部拘縮
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坐骨の周辺には、
・大殿筋
・ハムストリングス
・坐骨神経
・大腿方形筋
などがあります。これに加えて忘れてはならないのが、
◎大内転筋(もしくは小内転筋)
なのです。
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小内転筋は大人の50%くらいの人に存在する筋ですが、大内転筋の上端部と考えておけば良いと思います。この付着部が坐骨結節の前外側にあり、大腿方形筋の深部に位置します。この重なり部分が癒着を起こし、その上にある坐骨神経がそれに貼り付くと、がんこな股関節屈曲制限がおこるようです。
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坐骨と小転子がぶつかることを「坐骨大腿インピンジメント」と呼びます、この衝突が起こると、大腿方形筋が挟み込まれて、損傷もしくは炎症が起こります。その結果、大腿方形筋は小転子、小内転筋、浅層の滑液包や大殿筋、坐骨神経、さらにその上方にある外閉鎖筋などと癒着しやすい状態になります。このような癒着の拡大を理解しておかないと、治療に困窮することになります。
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■坐骨部拘縮の治療法
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上記の癒着の状況がわかれば、治療は比較的シンプルに進められます。簡潔に、手順のみを記載します。
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1)大殿筋を坐骨結節周囲、坐骨神経、大腿方形筋(もしくは滑液包)に対して上方にむけてリリース
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2)坐骨神経をその深層の双子筋・内閉鎖筋複合体、大腿方形筋、坐骨結節外側の半膜様筋起始部、大腿二頭筋長頭、そしてその深層の小内転筋・大内転筋からリリースし、坐骨神経の滑走性を確保
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3)大腿方形筋外側を小転子から上方にリリースします。次に、内側に移動して小殿筋から大腿方形筋内側部を上方にリリースします。
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4)小内転筋の上縁を下方に向けてリリース(その深部には外側では大腿骨、内側では短内転筋など)
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上記のような手順で、大腿方形筋を上方へ、小内転筋を下方へ移動させ、坐骨神経がその上で滑ることで屈曲可動域は改善に向かいます。
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■症例
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症例は臼蓋形成不全に対して、寛骨の回転骨切術を受けた方です。
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両側ともに屈曲可動域は90度程度で、骨性のゴツンというような硬いendfeelで、5年間改善なしの状況でした。
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上記の手順で癒着をリリースしていきました。その結果、決定的に可動域を改善させたのは、小内転筋・大腿方形筋の癒着のリリースでした。左は引き続き股関節前面の詰まりが残ったので、腸骨筋・iliocapsularisの深層のリリースを加えました。
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1回の治療で、左右の可動域は90度から、それぞれ120度、130度に改善ししました。
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