1:アーチが崩れることによって起こる足の障害
ヒトの足には歩行時の衝撃を吸収する役割を担うアーチ(土踏まず)があります。
アーチは、26個の骨とともに、筋肉や靭帯によって支えられています。アーチには内側の縦アーチ、外側の縦アーチ、横アーチという3つのアーチがあります。
足部に歪みが生じると、アーチが降下し、歩行時の衝撃を吸収する機能が破綻してしまいます。
アーチ機能が破綻すると足部にストレスが集中し、その結果、足底腱膜炎、疲労骨折、外反母趾といった障害が生じてきます。
例えば外反母趾は、第1MP関節の外反(足の親指の指先が内側に入ること)に随伴して、
第1中足骨の内転・回外(足の親指付け根が内側に向き外側に倒れること)によって生じます。
そうなる背景には、外側アーチの降下と楔状骨の外方への偏移が見られます。
したがって、その治療には足部全体のマルアライメント(歪み)の修正が欠かせません!
2:ハイアーチによる外反母趾
【ハイアーチ(凹足)とは足の甲が極端に高く、立っている時には土踏まずの部分が地面に接していない状態のことです】
足部のマルアライメント(骨の配列が崩れた状態)にはいろいろなタイプがありますが、
今回は外側アーチの降下を伴うハイアーチへの対策を説明します。
ハイアーチの足では、荷重する際に外側アーチが降下していきます。
外側アーチの降下、すなわち立方骨の降下は、その内側に隣接する楔状骨を外方に引き込みます。
それにより中足骨底が外方に引かれ、中足骨が内転・回外します(足の指の付け根が内側を向き外側に倒れます)。
このようなアライメントは、実際には、相当多くの人に見られる共通の問題です。
最終的に、中足骨内転・回外変形が大きくなり、母趾のMP関節(足の親指の付け根)にストレスを及ぼし、外反母趾が進行すると考えられています。
3:外反母趾の治療法
上記のようなマルアライメントに対して、その修正を行わない治療法を選択するということは考えられないことです。
対症療法だけでは、症状の増減を繰り返すだけになってしまうからです。
リアライン・コンセプトでは、
- リアライン(このマルアライメントの修正)を行い、最大限ストレスの集中を防ぐことを最優先としています
- その後、スタビライズ(筋力の強化)、コーディネート(マルアライメントを招く動作パターンの修正)へと進めていきます
4:外反母趾の症例紹介
20代女性
診断名:外反母趾
現病歴:ハイヒールを履くことが多く以前から痛みがあった。1週間前から足の親指の付け根の痛みが増し、
ハイヒールで歩けない状態になった。裸足での歩行時にも痛みあり。
評価・問題点
触診にて、第1MP関節、母趾外転筋に炎症症状を認めた。同部位に歩行時痛、第1趾背屈時痛があった。
第1趾中足骨内転、中足部回外、立方骨降下、踵骨回外、下腿外旋のアライメントを呈しており、
母指外転筋、短趾屈筋間の癒着、立方骨下の脂肪体の癒着をこれらの原因因子ととらえた。
マルアライメントによる応力集中の結果、第1趾MP関節、母趾外転筋の疼痛につながったと考えられる。
結果因子として第1趾内転に伴う、第2-5趾の外方偏位、外側荷重、腓骨筋機能低下も認めていた。
目標
足部マルアライメントの正常化、母趾MP関節の疼痛消失
治療プログラム
- 足部以外のマルアライメント修正
- 下腿外旋アライメントの改善(膝周囲の癒着に対する組織間リリース、下腿内旋レッグプレス)
- 後足部回外の改善(足関節内側の癒着に対する組織間リリース)
- 足部のマルアライメント修正
- 楔舟関節(楔状骨と舟状骨の間の関節)の可動性改善(モビライゼーション、母趾外転筋深部の癒着への組織間リリース)
- 立方骨の挙上可動性の改善(立方骨周囲の癒着に対する組織間リリース)
- 立方骨支持のためのインソール適用
- 第1MP関節周辺の癒着のリリース
- 背屈運動を阻害する関節包、皮膚、母趾外転筋、短趾屈筋間などの癒着に対する組織間リリース
- 長母趾伸筋と関節包との癒着に対する組織間リリース
経過
- 治療当日:母趾背屈時痛の消失
- 治療後1週:ハイヒールでの歩行時痛消失
考察
今回の症例では、母趾外転筋周囲の滑走性の改善と、足部アーチの改善により非荷重・荷重時痛の消失が得られた。
5:まとめ
外反母趾に悩まされている方は多くいらっしゃると思いますが、
ハイアーチ(外側アーチの降下)も外反母趾の原因になります。
こういった場合は、アーチの降下など足部のマルアライメントを修正していくことで痛みや症状の改善に繋がります。
ハイヒールのお悩みがある方はこちらの記事も是非ご覧ください。
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