膝の手術をしたのに痛みが取れない!リハビリも終わっているのに、どうしよう…半月板切除術後に生じやすい膝蓋下脂肪体拘縮

ジョイントヘルス

様々な場面で生じる半月板損傷。

スポーツの場面での損傷が多いですが、日常生活で膝を捻ってしまったり、

転んだ時などにも生じる、意外と一般的な怪我の1つでもあります。

半月板の損傷は自然治癒する可能性が低く、手術にて半月板を縫い合わせる縫合や

一部を除去するような手術をする場合があります。

 

今回は、問題となっている半月板の手術が終わったのちにも

痛みが残ってしまいお困りの方の為に、よくある手術後の問題についてまとめました。

手術後の問題

手術では、多くの場合、小さな傷しか残らないことが多いです。

しかし手術の時に、膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)という膝のお皿の下にある

組織に損傷が生じる場合があります。

(手術中のミスということではなく、この組織を触ることは一般的なことです。)

その損傷が、膝の痛みを誘発する可能性があります。

今回は、膝蓋下脂肪体が原因の痛みについて詳しく説明します。

painfull knee joint catched, illustration vector

膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)とは?

膝蓋下脂肪体は,膝関節の関節内,滑膜外に存在する脂肪組織です.

前方では膝蓋腱,後方では大腿骨顆間窩,横靭帯,半月板前角,膝蓋下滑膜ヒダを介して前十字靭帯,脛骨,上方では膝蓋骨(膝蓋骨内側縁,外側縁,膝蓋上嚢まで達する場合も),下方では深膝蓋下滑液包に接しています.

 

膝蓋下脂肪体の役割

機能的には,関節内の潤滑作用を向上させたり,膝関節の衝撃緩衝作用を向上させたりする役割を担っています.

膝蓋下脂肪体には神経終末が豊富に存在するため,鋭敏に痛みが感じられ,膝前面痛の疼痛源の一つとして認識されています.また,疼痛を引き起こす神経伝達物質が膝蓋下脂肪体内には多く認められているので,その血管拡張作用により炎症や浮腫を引き起こすとされています.

さらに,膝蓋下脂肪体は皮下脂肪と比べて多くの炎症性のサイトカインを産出することがわかっており,膝関節の炎症反応を調整する働きがあることが報告されています.このことから,膝蓋下脂肪体は膝関節の軟骨変性に関与し,変形性関節症の進行にも影響を与える可能性が考えられています.

膝蓋下脂肪体は単なるスペースを埋める補助的な組織ではなく,実は膝関節内の恒常性を維持する重要な役割を担っているのかもしれません.

 

膝蓋下脂肪体の動態

膝蓋下脂肪体は,膝屈曲時には膝蓋腱と脛骨との間隙が小さくなるため,大腿骨顆間窩に押し込まれます.一方,膝伸展時には膝蓋下滑膜ヒダに押し出されるように膝蓋腱下に移動します.通常,脂肪体の形状は,膝の屈曲伸展に対してある程度の自由度を持って変化します.しかし,炎症などにより脂肪体自体の可動性が失われたり,膝蓋大腿関節のマルアライメント(低位,高位,外側偏位など)や脛骨大腿関節のマルアライメントがあったりすると,脂肪体圧の上昇や膝蓋大腿関節に挟み込まれるインピンジメントが生じることが容易に想像できます.

 

膝蓋下脂肪体炎・拘縮とは?

膝蓋下脂肪体は,直接的な外傷,繰り返しの機械的刺激,膝関節の手術などにより炎症が生じ,浮腫や線維化を引き起こします.その結果,脂肪体の柔軟性が失われ,膝関節可動域制限,疼痛,大腿四頭筋筋力低下などが生じてしまいます.

 

症例:半月板切除術後だけれど…問題はこれ!

外側円板状半月の部分切除術後の5年を経過した症例で,長時間立位などで膝前面痛とこわばりを主訴としました。触診にて,膝横靭帯と膝蓋下脂肪体の癒着を確認しました.エコーで見ると,膝伸展時に脂肪体深部が膝深部に引き込まれているような状態でした.

 

膝横靭帯から脂肪体をリリースした後にエコーで見ると,脂肪体深層が脛骨から離れ,近位に移動する様子が読み取れます.これにより症状は消失し,快適にフルスクワット,筋力発揮,ジャンプなどを繰り返すことができるようになりました.

 

この症例は,半月板の鏡視下術後に膝蓋下脂肪体の拘縮が発生しましたが,これを防ぐか治療するかのいずれかをしない限り,いくら半月板がきれいになっても症状が残ってしまい,患者は完全復帰できません.膝蓋下脂肪体は,半月板や前十字靭帯と接しており,さらに関節鏡手術により脂肪体自体にも侵襲を受けている可能性があります.したがって,半月板や前十字靭帯の鏡視下手術後の膝蓋下脂肪体のマネージメントは重要になってきます.

 

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