尿もれ治療の設計図

ウィメンズヘルス

 尿もれに悩む方は、産後女性の50%以上とも言われています。しかも、その割合は年齢が上がるほど上昇し、高齢者では70%というデータもあります。尿もれを放置しても、生命の危機に至るような問題は起こらないので、医学的には軽視される傾向がありますが、生活に大きな影響を与え、社会生活を制限することにも繋がります。その結果、活動性を失わせてしまい、体力や運動昨日にも悪影響を及ぼします。

尿もれは女性の社会活動を制限する大問題。

尿もれ対策の基本は「癒着対策」

 尿もれの治療を経験するにつれて、その治療を進める上での基本的な設計図ができてきました。簡単にいうと、
1.膀胱の癒着
2.尿道の癒着
3.骨盤底筋の癒着
の3点に集約されます。

1.膀胱の癒着

 膀胱は、上の図の茶色に塗られた袋状の臓器です。尿を溜めることに特化した臓器で、尿が溜まると風船のように膨らみます。尿もれが起こるメカニズムとしては、①膀胱が必要のないときに縮もうとする「切迫性尿失禁」と②腹筋が強く収縮したときに尿が押し出されてしまう「腹圧性尿失禁」とに分けられます。

 腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、トランポリンなどで腹腔内圧が上昇したときに尿が押し出されてしまうと考えられています。しかし、ゆっくりと荷物を持ち上げるときも腹腔内圧は上昇しますが、それよりも腹筋の中でも一番深部にある「腹横筋」の速い収縮が起こったときの方が著明に尿もれが起こりやすいのです。腹圧性というのはおそらく不正確で、速い腹横筋収縮が引き金となって起こるのが、このタイプの尿失禁である可能性が高いのです。

 切迫性尿失禁は、過活動膀胱と関連付けられることが多く、心理的な影響などもあると思われています。男性でも、シャワー浴びたり、水が流れる音を聞いたり、あるいはトイレにやっとのことで到着したときに、不意に尿失禁が起こることがあります。その頻度や程度は圧倒的に女性のほうが強いとされています。実際に、膀胱の上方や後方で子宮と接していますが、その部分に指を触れると尿意が発生することがあります。人によっては、我慢できないくらいに強い尿意が発生します。この部分を刺激すると「過活動性膀胱」の症状が誘発されるのです。

 強い尿意は座っているときから立ち上がり、トイレに向かって歩くとさらに強くなります。これは立ち上がるときに股関節の前側の血管や神経を下方に引き下げられ、それが膀胱を引き下げて上記の尿意発生点を刺激するのです。膀胱が下方に引き下げられることで、尿意が強くなり、さらに排尿反射が起こってしまうこともあるようです。

 

 腹横筋は膀胱の前側に隣接しています。腹膜によって隔てられているとはいえ、両者の間に癒着があると、腹横筋が素早く縮むことによって膀胱は激しく揺らされる可能性があります。そのときに、膀胱の壁にある尿意を起こすセンサーを刺激すると排尿反射が起こるのではないかと推測されます。これがいわゆる腹圧性尿失禁の成り立ちです。治療としては、膀胱と腹横筋との間に適切な滑り(滑走性)を取り戻すような徒手的組織間リリースを行います。必要に応じて、膀胱と子宮の間の癒着、膀胱とその横を通る大きな静脈(外腸骨静脈)などとの癒着にも目を配る必要があります。

2.尿道の癒着

 尿道は、膀胱の下にあって、尿の通り道です。尿を通すこととともに、尿を止めるという重要な役割があります。尿道は、意識的にコントロールすることのできない「不随意筋」である内尿道括約筋と、意識的にコントロールできる「随意筋」である外尿道括約筋に包まれています。外尿道括約筋の周辺には、前方に恥骨、後方に膣、側方には脂肪がありますが、外尿道括約筋とその周囲の組織とが癒着すると、その収縮が妨げられてしまいます。

 実際に、尿道に指を当てて、「おしっこを止めてください」というと尿道は外尿道括約筋の収縮によって硬くなります。しかし癒着があると、その収縮は弱く、また力を入れている感覚がわからないという訴えが聞かれます。つまり、心理的な問題ではなく、外尿道括約筋が収縮したくでもできない状況になっていると、尿を止める能力が損なわれてしまうのです。

3.骨盤底筋の癒着

 骨盤底筋とは、骨盤の底の筋肉で、尿道を締めることに対して補助的に働きます。骨盤底筋が弱いと尿道括約筋の収縮が弱まる可能性があるのです。骨盤底筋の弱化は、出産に伴う骨盤底筋の損傷によって起こると考えられています。しかし、帝王切開での出産後にも尿失禁が起こりますし、筋力低下は起こるのです。実際のところ、骨盤底筋に力を入れる能力の低下は、骨盤底筋の癒着によって起こります。

尿もれ対策としての「癒着治療」

 尿もれに悩む方は全国に2000万人とも3000万人とも言われます。社会活動にも大きな制限をきたしています。的確な治療法が確立されおらず、対症療法すら有効なものがありません。私どもは精密触診という技術を用いて、
1.膀胱の癒着
2.尿道の癒着
3.骨盤底筋の癒着
が尿失禁のメカニズムを作っていることに気づき、1-3回の治療でほぼ完治させることができるようになってきました。尿もれに困っておられる方にこの治療法が届くように、治療法の普及に取り組んで参ります。

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