妊娠36週、呼吸が苦しい!
胎児が推定2200gを超えて、かなり横隔膜を圧迫し始めます。座っていても寝ていても息苦しく、また歩いても呼吸が最初に苦しくなり、有るき続けることができません。出産間近だから仕方がないと諦めている方も多いと思いますが、実は快適に眠れるように、快適に歩けるように、いろいろな対策があります。
1.腹腔の容積を広げる→胎児と横隔膜の距離を拡大
腹筋の中で一番深い位置にあるのが腹横筋。この腹横筋を長くすると腹腔の容積が拡大します。具体的には、腹部では腹直筋を内側にめくるようにリリースし、背部では背筋を腹横筋からめくるようにリリースします。その結果、腹横筋が引き出されて容積を拡大することになります。
下の動画の妊婦さんに対してもこのリリースを行ったところ、腹筋の緊張が弛み、どこを触っても柔らかい状態になりました。また胎児の頭や肘が体表からわかるくらいにゆとりが出て、横隔膜が上下に大きく動くようになりました。
2.みぞおち、脇腹の肋骨の動きを拡大→横隔膜を動かす
上で書いた腹直筋のリリースで、腹直筋の外側縁から肋骨弓までの距離を拡大することができます。また、みぞおち部分には肋骨を挟むように、浅層には外腹斜筋、深層にはない腹斜筋があります。これらを丁寧に肋骨から剥がすようにリリースするとみぞおち部分の肋骨の可動性が大きく改善されます。
一方、側面では、骨盤から脇腹、肩にかけて伸びている広背筋という大きな筋肉があります。これは、特に妊娠後期に入って横向きに寝る時間が長くなるに連れて、腹筋や肋骨の側面で癒着します。この広背筋は骨盤と肋骨にまたがるため、癒着によって肋骨の上方への動きを制限します。これを腹横筋や肋骨からリリースすることで、脇腹の部分の肋骨の動きが大きく拡大します。
3.胸の上部の肋骨の動きを拡大→肺の上部に空気を入れる
4.肋骨の変形を修正→動きやすい肋骨を作る
肋骨と肋骨の間には肋間筋という筋肉があり、これに皮膚が癒着している場合があります。その結果、肋骨の下部が体の前に向かって突き出しているような変形が起こります。仰向けになると、この肋骨の変形によって腰が反るようになり、仰向けで寝ているのが苦しくなります。これに対しては肋間筋をこするようにして皮膚をリリースし、皮膚による肋骨の運動の制限を取り除きます。
まとめ
以上のテクニックは全て腰痛治療に使うものですが、全く同じ技術を妊娠後期の女性においては仰向けの姿勢を快適にすることに役立てることができます。
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