ローラーの上でゴロゴロ・・筋肉をほぐす上で逆効果

ジョイントヘルス

 

今回は、スポーツ現場だけでなく

日常的に皆さんが「コリ」や「むくみ」を改善するために使用している

フォームローラーについて書きたいと思います。

フォームローラー(ローラー)とは

フォームローラーをご存じではない方もいらっしゃるかもしれませんので

まずどのようなものかをご説明したいと思います。

フォームローラーとは、筒状のマッサージなどに使用できるアイテムの事をさします。

凹凸のある商品や、そうでないものなど様々なものが販売されています。

効果としては、筋膜のリリース、マッサージといった用途で使用されている様です。

スポーツ用品店やネットでも簡単に購入できる商品です。

 

果たしてこのような器具を用いて「筋膜」をリリースすることができるのでしょうか?

効果はあるのでしょうか?

最近の研究知見をまとめてみました。

 

フォームローラーを使用すると何が起こるの?

①筋膜・ファシアの変化

「筋膜リリース」という言葉がよく使われていますが、フォームローラーの上に体をのせてマッサージをすることで

筋膜自体に変化が生まれるのでしょうか?

ここでは、ファシア(筋膜だけでなく、腱、骨、脂肪、臓器なども覆う膜)として検討を進めます。

 

ファシアは、その定義、機能、傷害や治療の影響など、科学的な統一した見解は未だ得られていません。

その中でもわかっていることとして、ファシアを変形(圧縮、剪断)させるような力は、

人間が発揮できる力よりもはるかに大きい(Chaudry, 2008)ということです。

したがって、フォームローラーのような器具や徒手療法によりファシア自体をリリースしたり、

はがしたりすることはできません。

ただし、フォームローラーを使用することで、ファシアの動きが改善する(Griefahn, 2017)、

深層のファシアと筋の間の滑りがよくなる(Krause, 2019)ことが報告されています。

 

②神経系の変化

フォームローラーを使用すると、脊髄の興奮性が低下し、その結果疼痛閾値が上昇する可能性が示されています(Young, 1985; Aboodarda, 2015)。

つまり、フォームローラーを使用することで、神経が抑制され、痛みが感じにくくなるというわけです。

また、別の研究では、フォームローラーを片脚だけに使用したところ、そ

の脚だけでなく逆側の脚でも痛みが低下したことが報告されています(Aboodarda, 2015)。

これは、中枢性の疼痛抑制、つまり脳の痛みを抑制する機能も影響を受けていることを示しています。

しかし、これらの神経抑制の効果は一時的なものであると言われています。

 

フォームローラーの効果は?

①関節可動域(ROM)

フォームローラーの使用により関節可動域が増加することが明らかになっています(Cheatham, 2015; Hughes, 2019; Wilke, 2020)。

ただし、この関節可動域の改善は、実施している最中、あるいは直後のみで、長期的な効果は期待できないことが報告されています(Hodgson, 2018)。

 

②筋肉痛

フォームローラーを使うことで、運動後の筋肉痛を軽減させる効果がいくつかの研究で報告されています。

一つの筋に対し90秒以上行うことで効果が認められるようです。

しかし、痛みへの効果も一時的なものとされています(Hughes, 2019)。

 

③パフォーマンス

運動前にフォームローラーを使用することで、スプリントパフォーマンスが多少向上することが報告されていますが、

筋力や跳躍高には影響がないと言われています(Wiwelhove, 2019)。

運動前に静的ストレッチを行うと、パフォーマンスの低下が見られると言われていますが、

フォームローラーではそういった低下は見られないのかもしれません(Cheatham, 2015)。

また、運動後のリカバリーの手段としてフォームローラーを使用することで、スプリントスピードや筋力が

多少改善されるようですが、跳躍高にはほぼ影響がないと報告されています(Wiwelhove, 2019)。

 

まとめ

フォームローラーを用いて、ファシアをリリースすることはできませんが、

ファシアの動きや滑りを改善することはできるかもしれません。

しかし、フォームローラーによって得られる関節可動域の改善は、

このようなファシアの形態的な変化というよりも、神経系の抑制による影響が大きいと考えられています。

 

そして、フォームローラーで得られる効果は、

関節可動域、痛み、パフォーマンス、どれにしても一時的なものであることを認識しておかなくてはなりません。

現在までのエビデンスを踏まえると、フォームローラーが有用とされるのは、

一時的にモビリティが必要とされる競技や運動の直前ということになります。

その為、長期的な改善を求める治療におけるフォームローラーの使用は

おすすめできなさそうです。

 

また、フォームローラーには副作用があります。

強くやりすぎると、筋内に瘢痕化・線維化が起こされ、組織としての柔軟性が失われます。

また、筋だけでなく、周辺の神経や血管にも圧がかかりますので、過度に行うと、癒着や損傷が生じたりすることもあります。

このような点も考慮して、フォームローラーの使用を検討していただければと感じます。

 

効果と副作用をしっかりと理解した上で

デバイスは選んでいただければと思います。

 

【参考文献】

 

Chaudhry H, Schleip R, Ji Z, Bukiet B, Maney M, Findley T. Three-dimensional mathematical model for deformation of human fasciae in manual therapy. J Am Osteopath Assoc. 2008;108(8):379-390.

Griefahn A, Oehlmann J, Zalpour C, von Piekartz H. Do exercises with the foam roller have a short-term impact on the thoracolumbar fascia? – A randomized controlled trial. J Bodyw Mov Ther. 2017;21(1):186-193.

Krause F, Wilke J, Niederer D, Vogt L, Banzer W. Acute effects of foam rolling on passive stiffness, stretch sensation and fascial sliding: A randomized controlled trial. Hum Mov Sci. 2019;67:102514.

Young JD, Spence AJ, Behm DG. Roller massage decreases spinal excitability to the soleus. J Appl Physiol (1985). 2018;124(4):950-959.

Aboodarda SJ, Spence AJ, Button DC. Pain pressure threshold of a muscle tender spot increases following local and non-local rolling massage. BMC Musculoskelet Disord. 2015;16:265. Published 2015 Sep 28.

Cheatham SW, Kolber MJ, Cain M, Lee M. The effects of self-myofascial release using a foam roll or roller massager on joint range of motion, muscle recovery, and performance: A systematic review. Int J Sports Phys Ther. 2015;10(6):827-838.

Hughes GA, Ramer LM. Duration of myofascial rolling for optimal recovery, range of motion, and performance: A systematic review of the literature. Int J Sports Phys Ther. 2019;14(6):845-859.

Wilke J, Müller AL, Giesche F, Power G, Ahmedi H, Behm DG. Acute effects of foam rolling on range of motion in healthy adults: A systematic review with multilevel meta-analysis. Sports Med. 2020;50(2):387-402.

Wiewelhove T, Döweling A, Schneider C, et al. A meta-analysis of the effects of foam rolling on performance and recovery. Front Physiol. 2019;10:376.

 

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