卵管閉塞とは・・・
卵管閉塞とは、何らかの原因で卵管の疎通性が失われ、詰まってしまった場合の疾患名です。通常、子宮卵管造影によって確定診断が下されます。治療法としては顕微鏡下手術療法(卵管の疎通性を回復させる手術)と体外受精があります。平田クリニックのウェブサイトによると、不妊全体のうち卵管性不妊が31.5%を締めているとのことです(http://www.ob-gy.com/fujinka/rankan.html)。
卵管の精密触診
卵管閉塞(もしくは狭窄)は造影剤が通りにくいことを明らかにすることはできますが、卵管の内部が細くなっているのか、それとも卵管が急カーブするなどして潰れているのかを判断することはできません。前者であればカテーテルなどで卵管を内部から拡張するような治療が適応となるでしょう。一方で、卵管の急カーブなどルートに問題がある場合は、そのルートを改善することが求められます。
卵管閉塞が認められる方において、精密触診によって卵管のルートをたどる機会がありました。右卵管は子宮体から側方に出た後、2cmほどで後方に急カーブし、次に後方の後腹膜に癒着しつつ下方に急カーブしていました。後腹膜との癒着においてはリリース時痛が認められました。散水に使うホースを急カーブさせるとホースの断面が潰れてしまいます。これと同様に卵管が急カーブすると、断面が小さくなる可能性があります。このような卵管のルート異常と卵管閉塞を引き起こすことについての研究が必要です。
一方、卵管閉塞が認められない左卵管は、子宮体から側方に出た後、緩やかに後方にカーブし、また緩やかに下方にカーブしていました。後腹膜との癒着はありましたが、右よりも下方において認められ、その範囲も右の半分程度でした。
以上の精密触診の結果は、あくまでも腹壁から卵管を辿った結果なので、この結果を卵管造影からわかる卵管の3次元的な走行と照合する必要があります。卵管造影の結果を3次元的に表示するにはMRIで3D 画像を合成する必要があり、通常の検査よりも手間がかかります。しかし、触診と3D-MRIとを照合することによりルートの異常が明らかになり、そのルートを改善する治療が選択肢として浮上することになります。
卵管のルート異常に対する治療
卵管が急カーブしているとき、まずは後腹膜との癒着をリリースしてみたところ、触診で確認できる範囲では左と同様に急カーブを緩やかにすることができました。この卵管のカーブの変化が卵管閉塞を改善することにつながるか否かは定かではありません。しかし、少なくとも卵管が潰れる可能性は多少は小さくできるのではないかと思われます。今後、前後の卵管造影によって治療法としての有用性を確認することができるのではないかと思われます。
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